山下くに子 / 晴れ、時々、わたし

 たとえ、あなたが心の広〜っい人でも、たまたま電車で、イチャつくカップルの側に乗り合わせてしまったら、どうします?
 最近、かなり勘違いポジションを取っている若いカップルを多く見かけますよね。彼らを勘違いポジションと感じるのは、やっかみでもなく、あなたが年齢を重ねたせいでもなく、それは大人のスタンスを学習してきたキャリアによるものでしょう。でも、スタンスを取り過ぎて失敗しているケースも、これまた多くなってきているはず。恋愛モードのスイッチ、錆びていませんか?

 特効薬、あります。泣く子もだまるラブ・美メロ・メーカーの最高峰、ベイビーフェイスです。ニューアルバムは、タイトルも「グロウン・アンド・セクシー」。ずばり、大人の恋愛です。はっきり言って、との曲もブレることなく、誘ってます(笑)ゞ 赤ちゃん作ろうねって歌ってます(^ ^;)ゞ でも、それが非常にナチュラルなことに思えるのは、彼のメロディ・ラインとファルセットがかかった声のせい。さりげない転調やマイナー音へのはずし方、サビ部分の掛け合いで、確実にあなたの足は寝室へ…?

 近づきそうで、近づかない…。大人のスタンスを再確認したいなら、ノラ・ジョーンズです。やはり魅力は、あのハスキー・ボイスで歌う甘いフレーズ。しっとりとした秋の夜にグラミー賞8部門をとったアルバム「ノラ・ジョーンズ」から「ドント・ノー・ホワイ」でも聞けば、ダイレクトに「好き」とか「嫌い」とか、もう、そんなことは関係なくなります。自分の気持ちはどうなの? 自分はどうしたいの? そんな自問自答が、かえって、音楽と過ごす穏やかな夜にぴったり。すると「夜風が吹いてきたので、暖かい所に行きませんか…」ってな大人の言い訳が、たとえ口下手のあなたでも、スルリと出てきちゃうんだなぁ、これが。

 一方、ダイレクトに「好き」と押しまくり、盛り上げるのが、ハリー・コニックJr,です。なにしろ、声が甘いし、歌い方もスイートだし、思いっきりセクシャル・モードですっ!アルバム「オンリー・ユー」は、タイトルからもわかるとおり、オールド・スタンダード中心にたラブ・バラード集。昔の曲は、しっかりと愛を伝える使命を担って世に送り出されますから、恋の矢は確実にハートの中心を狙ってきます。誰かのハートを狙いたいなら、迷うことなくBGMに…。

 そう、恋愛モードは、あなたが仕掛けることもあれば、向こうが仕掛けることもある…。誰かといるときに、こんなアルバムで演出されたら、その時はもう覚悟を決めて。そして、その後のことは…、教えて! 

青空の下、軽快にテニスラケットを振るり、ボールを追いかける人の姿が似合う季節です。スポーツの秋ですよね…とは言うけれど、自分を振り返ってみると… あれ? このところ全然、運動してない〜ッ!

 運動しなくちゃと思いつつ、なかなか運動できない、身体はすでにどっこらしょモードに入ってしまっている似た者同士の皆さん、今回は強制的に身体を動かしてあげましょう。これを聞けば、身体も勝手にビートを刻み、踊り出す〜! 運動不足の解消にはもってこいです。

 でも、急に激しい運動をしたら、あきまへ〜ん! かえって疲れが溜まって逆効果。まずは、サルサでウォーミングアップしましょう! 気付け薬代わりに、日本人サルサ・バンド、オルケスタ・デ・ラ・ルスがこの夏にアルバム「アルコ・イリス」はいかが? 冒頭の「ハァ〜アアッ!」で身体に一気に酸素がかけめぐります。ふぉ〜、生き返る〜! アルバムの半数以上の曲を日本語で歌っていて、意味がわかるだけに、気持ちもぐぐっと入ります。

 でも、ちょっと動いただけで、もう息も絶え絶え、あきまへ〜ん!になってしまった人、もう1本、陽気なカンフルを打ちましょう。やっぱ、この時期、コレでしょう〜! テレビの人気キャラクター、ゴリエちゃんの「ペコリ・ナイト」。 聴けば、眠気も吹っ飛びます! 日ごろテレビを見るヒマもなく、「ゴリエって誰?」という方でも大丈夫。曲は、1975年に発売されたベイ・シティ・ローラーズの「サタデー・ナイト」のカバーです。「エス・エー・ティーユアー♪」と歌えば、心うきうき。ダンス振り付け解説入りなので、身体もうきうき。

 ここまで来れば、後は自分の気の向くまま、身体の動くまま。違いのわかる大人サウンドのオゾマトリに登場してもらいましょう。ラテンやロックなど音楽のジャンルを超え、ついでに国籍も超えて、独自のミクスチャー音楽を表現する、アメリカのグループです。時にエキゾチック、時にヒップホップ。以前iPodのCMに使われた曲も、2005年グラミー賞を受賞したこの3作目のアルバム「ストリートサインズ」に入っています。大人しく聴くより参加したくなるサウンドなので、時に自分でも手拍子を入れたり、雄叫びを入れたり、自分流に楽しんじゃってください。

 身体を動かしたら、さぁ、食欲の秋へ一直線! そして、またお腹のあたりをなでながら「最近、動いていないなぁ」と感じたら、ここに戻ってきてくださいね。

 「遠いところをよく来たね〜」 例えば、旅先でこんな言葉をかけられると、妙に心がなごんだりします。同じように、親元を離れて独立しようとしたとき、「そんな遠くまで行かんでも…」と言われて、新生活にワクワクする胸がチクリと痛んだ経験がある人も多いことでしょう。こういうときの距離というのは、「苦労」と同義語なのかも…。

 韓国出身のBoAも、デビューが決まったとき「そんな、わざわざ日本まで行かなくても…」と家族に言われたそうです。そりゃそうだ、まだ14歳だったんだもんね〜。本人も、言葉の壁、習慣の違いで大変だったそうですが、努力は確実に実を結ぶ…。それを感じられるのが、2005年のツアーを収録したDVD「BoA アリーナツアー2005  ベスト・オブ・ソウル」。ハイテンションで駆け抜けるライブなのですが、たとえ自分が精神的に目一杯のときでも、「ボアちゃん、大人になったね〜」なんて声をかけてあげたくなるような、大人の余裕が生まれてくるDVDです。

 そんな遠くまで…に加えて、国と国との歴史や状況で「何も日本で…」と言われたのが、中国出身の女子十二楽坊。ファーストライブの後、「日本人ってこんなに優しかったのね」と泣いた…という記事が当時ありました。内心、複雑な想いでずっと演奏していたんですね〜。そんな彼女たちが、「涙そうそう」など日本のヒット曲をカバーしたアルバムが「ザ・ベスト・オブ・カバーズ」。もし、今、落ち込んでいるなら、とにかく聞いてみて。「どらえもんのテーマ」で思いっきり、肩の力が抜けますから…。

 そして、そんな遠くまで行かなくても…の元祖は、なんといっても台湾出身の欧陽菲菲。「雨の御堂筋」は、外国籍の歌手が日本の歌謡界で初めて放ったビッグヒットでした。昭和46年ですから、マクドナルドの1号店が銀座にオープンした年です。そのとき、あなたは何していました? あ、生まれていない? ……コホン。でも、「欧陽菲菲 ベスト30」のジャケットを見よ! 時代のパワーを感じるでしょ。中味は彼女のヒット曲に加えて、「この胸のときめきを」など、その時代のヒット曲。聞いているうちに、自分も歌いたくなるパワーが、ぐわぐわっと湧いてきますよ。

 歩いていたら、時に遠回りになることもあるけれど、遠くまできた甲斐がある…。きっと、今のあなたはそんな人生の途中…。(2005.09.21掲載)